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春です!新生活をはじめる人に勧めたい5冊はコレ!

達人出版会 代表取締役社長であり、日本Rubyの会代表理事である高橋征義さんによる「新生活を始める人」に向けての5冊です。高橋さんは、Ruby コミュニティでの活動もさることながら、日本にもファンの多いTEDのプレゼンテーション本にも紹介されている「高橋メソッド」という世界レベルで知名度の高いプレゼンテーション技法を考案された方でもあります。 また、「ITエンジニアに読んでほしい! 技術書・ビジネス書大賞2014」でも選考委員をつとめられているように、ITエンジニアのみなさんに本をおすすめするに、もっともとすばらしい方の一人だと思って、ゲストブログをお願いしました。(2015/03/19)


 

みなさんこんにちは。高橋征義と申します。

春は進学・就職・転職・異動などなど、新しい生活を始められる方が多い季節です。また、自分の周囲の環境は特に変化がなくても、せっかくなのでなにか始めたい、という方もいらっしゃるかもしれません。

 そこで、主にITに関わる方々を対象として、新しい生活を始めるときに読みたい書籍を5冊ほど選んでみました。新生活早々、古典に走るのもどうかという気もしますし、入手しやすさも考慮して、比較的新しめの本を中心に選んでいます。どれか1冊だけ気になったものを読まれるのでもいいですし、あるいは5冊全部読んでみるのもよいでしょう。

 

Thomas A. Limoncelli『エンジニアのための時間管理術』(オライリー・ジャパン)

ISBN: 978-4873113074

翻訳のタイトルは『エンジニアのための』になっていますが、原題は『Time Management for System Administrators』になっています。とはいえ、特にSA(システム管理者、今どきでいうとインフラエンジニアでしょうか?)に限らず、定期的な仕事と急な仕事がばんばん入ってスケジュール管理が大変になっており、それを解決するツールとしてPCやスマートフォンなどのITをある程度使うことができる人(すなわち現代のITに関わる多くの人)なら一読の価値がある本です。

本書では、タイムマネジメントの原則から始まり、具体的なツールやその使い方、そして自動化に至るまで、どのようにすればタイムマネジメントができるのかを紹介するノウハウ本です。似たような趣旨の書籍としては、『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』などが近いところかと思われますが、本書はよりITエンジニアやその周辺の方々向けに、様々なツールの使いこなしを紹介しているのがポイントです。

 しかし本書の素晴らしさはそういった具体的な指南ではありません。最後の最後、「おわりに」こそがその真骨頂なのです。

 ここでは凡百のタイムマネジメント本では語られない部分が語られます。それは、タイムマネジメントによって生まれた自由な時間を使って何をするべきか、です。

 本書で著者が明かす、そのするべきこととは、「悪と戦う」ことです。……と言われても、突然何言ってるのこいつ感しかないかもしれませんが(実際読んでいても唐突な展開にそのような感想を抱いてしまうわけですが)、実際その詳細を読んでみると納得できる考え方です(もちろん納得しない人もいるかと思います)。

 新生活に向けて、悪と戦いたい方にも、別に戦いたくない方にもおすすめしたい一冊です。

 

ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン『小さなチーム、大きな仕事 完全版』(早川書房)

 ISBN: 978-4152092670

 ひところに比べると、最近はスタートアップというか起業という選択肢も一般的なものになってきました。そろそろ新しいビジネスをはじめたいとか、すでに春から始めることが決めたという方にぜひ読んでいただきたいのが本書です。

 このブログを読まれている方であれば、「Ruby on Rails」の作者DHHことDavid Heinemeier Hanssonと、そのDHHが勤めているスタートアップ「37signals」改め「Basecamp」の創業者・CEOのJason Friedの2人による共著です。翔泳社さんが主催されている「ITエンジニアに読んでほしい! 技術書・ビジネス書大賞2014」のビジネス書部門でも大賞となりました。

 内容としてはスタートアップ向けの考え方について、短いエッセイというかTipsをまとめたものなのですが、本書でも「スタートアップ(新興企業)ではなく企業を始めよう」というタイトルの文章もあるように、最近のスタートアップの風潮には批判的なところもあります。表題にある中では「小さな」というところへのこだわりは大きく、「スモールスタート」というだけではなく成長しても極力スモールであるべきだ、という主張が全編にあふれています(ついでに一編々々の長さも短いです)。

 ちなみに冒頭にも書いた通り、本書では「37Signals」という社名が記載されていますが、現在は「Basecamp」という名前に変わっています。これは、いろいろあったプロダクトを一掃し、Basecamp一本に絞ることにしたためです。この社名変更と路線変更については賛否両論あったわけですが、本書の主張からするとまさしくあるべき行動そのものというところで、言行一致力の高さを感じさせてくれました。本書の説得力もアップするというものです。そのような、一本スジの通った主張になっているところこそ、本書の魅力になっています。

 強いて本書の欠点を挙げておくならば、「完全版」と銘打っている割には、新書版にあった訳者あとがきがなくなってしまっていることがちょっと(かなり)残念です。とはいえ完全版に収録されているイラストも一見の価値があるので、どちらが良いかは甲乙つけがたいところです。でも、あとがきに書かれていた翻訳の過程も面白かったので、機会があれば両方読み比べてみるのをおすすめします。

 

マイケル・C・フェザーズ『レガシーコード改善ガイド』(翔泳社)

ISBN: 978-4798116839

 新生活なのにレガシー?? と思われるかもしれませんが、新生活だからこそ勧めてみたいと思い、取り上げてみることにしました。

 巷では新しくて今風でかっこいいフレームワークが流行っているかもしれませんが、現実にはいくらでも古くさく、コードがあるわけで、新期早々そのお守りをせざるをえないかもしれません。そこで挫折してしまっては、せっかくの新生活も台無しです。あるいは新しいフレームワークを使うにしても、開発を始めたコードはその瞬間からレガシー化と戦わなければいけません。むしろ、最近できたフレームワークの方が、長くメンテナンスされている枯れたフレームワークよりもより短い期間のうちに古びてしまう可能性もあったりするのが悩ましいところです。

 そんなあなた(や私)がレガシーなコードとともにレガシーな人間にならないようになるためには、本書を読むことが欠かせません。

 本書の何よりも大事な点は、レガシーなコードも、レガシーなコードに関わる人間も否定しないことです。しがらみが服を着て歩いているような混乱を極めたコードを触っていると、コードも自分も駄目駄目なんじゃないかと、どうしてもネガティブな気分になってしまいがちなものです。

 そんな風に、どうにも疲れて何もやりたくなくなったときには、第24章「もうウンザリです。何も改善できません」を紐解いてみてください。たとえひどい状況で疲れ果ててしまっている人に対しても、あきらめることではなく何かしらできることが必ずある、そこから始めていけばきっと改善できる、という信念に満ちた著者からの力強いアドバイスを読むと、フェザーズ超いいやつと思うことうけあいです。そしてこのあきらめない力強さこそが、レガシーコードと向き合い続けるために欠かせないことなのではないかと深く痛感するのです。

 レガシーコードとの戦いは終わることはありません。向き合う覚悟を決意した時、本書はその意志をしっかりと支えてくれるでしょう。

 

 

J. Glenn Brookshear 『入門 コンピュータ科学』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)

ISBN: 978-4048869577

IT方面の仕事をされている方で、春だから改めて基礎的なところを勉強したい or 勉強し直したい、という方におすすめしたいのが本書です。

本書はふつうにCS(コンピュータサイエンス)の教科書の翻訳です。コンピュータサイエンス専攻の学生じゃない人にも、その概論向けに使えるように、広く浅く書かれているものです。なので、読んでいて心躍る素敵な読書体験ができるわけではないのですが、こういう素養があるかないかで、日々ITに向き合う姿勢も変わってくるのではないかと思います。

もっとも、本気でコンピュータサイエンスを学びたいのであれば、本書を読むだけでは不十分で、本書の各章について最低1冊ずつくらいは書籍を読んだり手を動かしたりする必要があるでしょう。あるいは本書の簡潔な説明だけではどうにもよく分からん、ということもありそうです。そういう意味では、本当にコンピュータサイエンスの入り口としては、物足りないところもあります。

とはいえ、計算機科学や情報工学の学部に通っているのでもなければ、充実した学習のための時間的・空間的コストを捻出することは容易ではありません。であれば、まずは概論書でそのおおまかな概略に触れ、そこから必要に応じてさらに専門的な文献を掘り下げていく、というのはとても現実的で戦略であり、本書はまさしくその用途にはぴったりです。

もちろん、情報の学生であっても、苦手な分野も含めてその全体を早い時期に垣間見ておく機会は有益なものであると思います。私も情報工学を学んでいた学生時代にこういう本があればよかったのに……と思います。

一見するとそんなに分厚く見えませんが、600ページ以上のボリュームがあるにも関わらず、本体価格は4,000円を切るところもおすすめなポイントです。また翻訳の日本語もこなれており、専門書というよりは一般書に近い読みやすさになっています。

別にコンピュータサイエンスの研究に関わりたいというほどの気持ちはなく、単純に興味本位でその世界を覗いてみたいという人にも気軽におすすめできる、貴重な一冊です。

藤井太洋『Gene Mapper -core-』(セルフパブリッシング)

セルフパブリッシング版: http://genemapper.info/

早川書房版: ISBN: 978-4150311070

もともと大学の読書系サークル(推理小説研究会とSF研究会)に所属していたこともあるせいか、この手のおすすめ本の選書の場合、5冊選ぶなら1冊くらいは風変わりというか、率直に言うと変なセレクトをしなければいけない義務に駆られてしまう私です。あ、いえ、別に本自体は変な本ではないのですが。

 そんなわけで、イーガン『しあわせの理由』(早川書房)とどっちがいいか迷った挙句、本書を入れてみます(イーガンはむしろ新生活に疲れた頃に表題作を読むのがおすすめかな……と思い直したので。でも渋い味わいの良い本なんで、『しあわせの理由』は5月病になりかけた頃に一読するのをお勧めします)。

 さて本書を選んだ理由ですが、それは科学技術の進歩に対して前向きで、その進歩をより良いものにするべく積極的に関わろうとするスタンスにあります。

 最近だと人工知能とかシンギュラリティ等など、科学と人類の対立を煽る向きもあるかと思うのですが、なんだかんだいってITに関わるのであれば、科学と技術に対して一定の信頼を置かないと先々しんどいんではないかと思います。無批判に技術の力を信じるのもまずいですが、どちらかというと危険を指摘する人の声が大きくなりがちな昨今、危険を恐れず、欠点もリスクも理解した上で肯定し、その未来に積極的に関与していこうとするスタンス。そのような力強さが頼もしい本書を読むのは、きっと良い体験になるのではないかなあと思うのでした。

新生活を始めるにあたって、科学と技術の原点にあるべき前向きなパッションを、本書を通じてぜひ改めて感じていただきたいと思います。個人的には高校時代に読んではまった、『未来の2つの顔』とか『創世記機械』とかの頃のJ.P.ホーガンを思い出させて、懐かしくもうれしい感じがあったのもプラスです。

 このような視点では、一般読者向けにリライトされた早川書房版よりも、良くも悪くも手加減してないセルフパブリッシングのオリジナル版、『Gene Mapper -core-』の方が良い感じです。こちらは著者の藤井さんのサイトや各種電子書籍ストアで購入できます。

どうしても紙の本じゃないと駄目だ! という方は、リライト版の『Gene Mapper -full build-』も普通に入手できますので、こちらをぜひどうぞ。

 

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