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コミュニティリーダーシップサミットから学ぶOSSコミュニティマネジメント(前編)

毎年、世界中のコミュニティのリーダーが集まるコミュニティリーダーシップサミット(Community Leadership Summit,CLS) 。グーグル、Twitter、レッドハットなどの著名な企業のコミュニティ担当や、大小さまざまなコミュニティから、たくさんのリーダーが参加しています。このCLSに参加したJapanese raspberry pi users groupでおなじみのおおたさんから、イベント紹介と日本での取り組みを前編後編に分けて紹介します(2015/04/13)。

 



Japanese raspberry pi users group のおおた まさふみです。今回から前編後編で、コミュニティリーダーシップサミット(Community Leadership Summit ,CLS) から学んだことをきっかけにした、OSSコミュニティマネジメントやコミュニティのリーダーについて、ブログで書かせていただきます。
 
みなさん、OSSコミュニティというと、どのようなコミュニティを思い出すでしょうか?

例えば、Linux開発コミュティやRubyコミュニティなどたくさんのコミュニティがあります。わたしも、Japanese raspberry pi users group をはじめとして、多くのコミュニティに参加してきました。うまくいっているコミュニティもあれば、うまくいなくて、すでになくなってしまったコミュニティもあります。そんな経験から、OSS コミュニティについて、日頃から考えていることがありました。
 
そうしたところ、参加していたコミュニティのメンバーから、たまたま、世界中のコミュニティのリーダーが集まるコミュニティリーダーシップサミット(Community Leadership Summit,CLS) というイベントが毎年開催されていることを知りました。そして、幸運なことに、2012年、このイベントに参加することができ、大きな気づきを得ることができましたのです。(2014年の参加者リストを見ると、グーグル、Twitter、レッドハットなどの著名な企業のコミュニティ担当や、大小さまざまなコミュニティから参加しています。必ずしも、OSSコミュニティだけでなく、オンラインゲームコミュニティや企業のコミュニティなど、さまざまコミュニティからも参加者が多いのも特徴です)

コミュニティリーダシップサミット風景4

それは、日本でのOSS/ITコミュニティが成長・成熟する中で、そのコミュニティリーダーにとってコミュニティマネジメントの問題は避けることができないこと、また、日本では日本流のコミュニティマネジメントの技術が必要であることを感じていたのです。そして、この考えを同じくする有志の方のご協力もあって、今年2月に日本での初のCLSを開催することができました。

前編は、CLS の参加レポートを中心にして、世界のコミュニティリーダーが議論していることを中心に日本との違いも含めて紹介したいと思います。後編では、日本で初めて開催したCLSの紹介をしたいと思います。

コミュニティリーダーシップサミットとは?


コミュニティリーダーシップサミット (CLS)は、毎年、オライリー社主催のグローバルイベントであるOSCONのプレイベント的な形で開催されています。CLSには、世界中から多くのOSSやIT系のコミュニティのリーダーが集結し、コミュニティとはどうあるべきかの討議を活発に行います

 このイベントを主催するのは元Canonical (Ubuntu)のコミュニティマネージャーであったJono Bacon氏です。彼自身が、コミュニティのマネジメントに悩み、それだったら、「みんなで一緒に考えよう!」と、イベントを開始したそうです。現在は、多くの人々が集まり、多くの人がお互いに悩みを打ち明けたりコミュニティマネジメントでの事例・プラクティスなどを共有したりしています。

CLS参加のきっかけ


わたしは、かつてOpenSolarisのコミッターであるCore Contributorの1人でした。そのような関係でもあり、サンマイクロシステムズ社のコミュニティマネージャーであったJim Grisanzio氏とは知己の関係でありました。彼から、たまたまJono Baco氏の活動を紹介されましたのです。そして、Jono(わたしは普段Jonoと呼んでいるので、以下は、Jonoと記載)の著書であるコミュニティマネジメントの技法やプラクティスをまとめた『Art of CommunityPDF版は無償ダウンロード可能)を勧められました。現在、邦訳は、『アート・オブ・コミュニティ ―「貢献したい気持ち」を繋げて成果を導くには』として、オライリーより出版されています。

 

そこで、実際に(当時は翻訳書は出ていなかったため)原書を入手し手に取ってみて読んだのですが、確かにコミュニティに携わるものとして『目からウロコなこと』を書いてある部分がありました。一方で、Jonoがあげる具体例には、日本のコミュ二ティでは見られない部分などに違和感を感じる部分もあり、実際本当にこの本は役に立つのか?疑問に思う部分が大いにあったのも事実です。

そんな背景があったため、2012年にOSCONに本業の関係からたまたま参加する機会ができたことから、「どうせなら!」と思い、CLSにも参加することにして、Jonoに会って話をしてみたいと思ったのです。
 

CLSはどのように進めされるのか?


CLSは2日間の開催です。基本的に、参加者のみんながディスカッションしたい内容を持ち寄りシェアするという形式をとるアンカンファレンス方式で発表する形となっています。

アンカンファレスとは、予めプログラムを決めずに、その日になってからプログラムを決めてその場に応じてカンファレンスを進行しようというものです。参加者はテーマに沿ったセッション(今回の場合は、コミュニティに関すること)を提案して、採用されるとそのセッションが開催されます。

とかく日本でこのようなアンカンファレンスを開いた場合、自ら率先的に発表する人はいない、あるいは多くはありません。しかし、海外ではとにかく旺盛で、一斉に募集開始から並び立て、あっというまにスロット(アンカンファレンスの枠) が埋まります。CLS の参加者は、スロットを確認して、自分が参加したいセッションに参加します。

ア ンカンファレンスというと、進め方にについて、参加したことがない人には、わからないかもしれません。CLSでのアンカンファレスは、日本でいうならグ ループディスカッションに近く、ファシリテーター(=発表者)がいて、ノートテイカー(=書記)がいます。そして、ファシリテーターは、ある意味ゆるい進 行を行いながら、セッションを進めていきます。


コミュニティリーダシップサミット風景1

セッションに申し込むために列をつくっている

 

コミュニティリーダシップサミット風景2

すでに、アンカンファレンスの枠はいっぱい


各日の最後に成果発表があります。各セッションのファシリテーターが代表して報告を行って、みんなで共有する形になります。これによって、参加することができなかったセッションの概要も知ることができることになります。

コミュニティリーダシップサミット風景3

各セッションでの議論の風景


また共通セッションも開催されます。二日間ともに午後に開催されます。事前にこの共通セッション部分のみこのイベントで決まっています。

コミュニティリーダシップサミット風景6

全体に向けて各セッションの報告


1日目終了後には懇親会があります。懇親会もCLSではイベントの一つとして推奨されています。わたしも、夜中まで懇親会に参加して、日中話したりなかったことをさらにディスカッションしたり、カラオケに参加したりと、世界中の人とコミュニケーションしました。
 

CLSで参加したセッション


わたしが参加したのは、主には次のようなものです。

  •  OSSの多言語化・ローカライズでの問題点
  • インド・中国のOSSコミュニティの事情
  • コミュニティでの効率的なOSSトレーニングの方法とは(教材・ハンズオン)
  • OSI(Open Source Initiative) の普及について ーコミュニティでのある問題点をみんなで議論して意見を求めるセッション
  • ゲーミフィケーション事例について
  • コミュニティとSNS・マネタイズについて


共通セッションでは、次のようなものが議論されました。

  • 初心者をどう引き込んでいくか(ギークばかりが固まったり、コミュニティがだんだんと年齢を重ねていき、若い人が新しくはいってこない問題)
  • Ubuntuのコミュニティ貢献に対するプライズマークの取り組み(プライズマークとは、どのように貢献者をたたえるかということ。どうやって貢献をゲーミフィケーションの一つとして楽しむかを行うかなどを議論)


セッションの感想


正直この当初コミュニティマネジメントで悩んでいたこともあったりして、こういうマネジメントについて討議するとこと自体が新鮮な内容でした。

 ただ、『コミュニティとSNS・マネタイズについて』のセッションで、大変ショックを受けた出来事がありました。2012年当時、日本ではOSSでマネタイズする環境がほとんど整備されておらず、「OSS=お金のかからないもの」と捉えられていたため、『日本ではOSSの金儲けにプロプライエタリと比較され忌避される傾向にある』と、このセッションで自分として意見を述べましたのです。しかし、これに違和感を覚えられたのでしょうか? セッション終了直後、セッション参加者のある人から、呼び止められ、『お前のいっていることはさっぱりわからない』と言われてしまいました。反論するにも、「どうしたら」と考えているうちに彼とはキチンと話す機会を失ってしまったのです。もっときちんと話をしたかったという思いが残りました。

2日目の最後の成果発表のまとめの中で、Jonoが今回の議論を受けて、自著『Art of Community』の内容をアップデートしたいとう話がありました。「なるほど、やはりこのCLSと本は繋がっていて、本はやはりこのCLSであった議論の内容のまとめなのだな」と思いました。そのあと、実際に、Jono本人に直接『Art of Community』の真意を聞いてみたところ、その通りであるとの回答をもらって、「やっぱり」と実感しました。 

全体を通して、これほどまでに、積極的に意見と話ができなくてはいけないセミナーは初めてでした。かつてJim Grisanzio氏は、日本のOSSコミュニティのメンバーについて「シャイで積極的に意見を述べない」という日本独特なものを考慮する必要があると言っていたこと思い出しました。そして、ある意味CLSの参加は必要だったのか、Jonoの本は本当に役にたつものなのだろうかという疑念も持ち帰りました。

CLSを日本にも!


上述した、『Art of Community』は、渋川よしきさんによって、翻訳され、オライリー社より出版されました。出版の過程で、多くコミュニティ関係者がレビューしたと聞いています(書籍は評判になり、多くのコミュニティリーダーが購入したようです)。わたしも感じたように、渋川さんも注意書きとして書籍で見解に書いているように、いくつか違和感のものがあります。

違和感を感じたのは、わたしだけでないと分かり、また、実際に本場CLSの参加をとおして感じたことことを伝えたい、そして、「日本には日本流を」と考え、日本版CLSの開催は必要だなという思いにいったのです。このような地域や国レベルのでのCLSの開催は、Jonoも推奨していたと言うことも励みになりました。

 そこで、まず、2013年3月に開催されたオープンソースカンファレンス浜松のライトニングトークで、「Community Leadership Summitを日本でやろう!」と題して、簡単なレポート発表しました。その後、いろいろなコミュニティリーダーの方々と、機会があるごとに、CLSの日本開催や皆さんとコミュニティのあるべき姿を議論したいと話をしました。

そのような活動の中で、たまたま、OSS Japanのリーダーである今駒さんから、OSS Japanでの後援をいただき、オープンソースカンファレンス東京2014秋において、CLS報告を実施しました。さらに、この春に開催されたオープンソースカンファレンス東京 2015春で、とうとう、 CLSトライアルイベントである「CLSx Tokyo 2015 #0」の開催にこぎつけることができましたのです。

その詳しい話は、後編で紹介します。

 

余談: そしてJonoに

Jonoに日本のコミュニティアクティビティがあまり知られてないだろうと思って、ゲーミフィケーションの一つとしての『うぶんちゅ』のコミックをプレゼントし、英語訳もあるよ、と言ってみたところ、彼は、思わずにこりとしました。結果、彼のウェブサイトでも日本でのゲーミフィケーションのことを取り上げてもらいました

コミュニティリーダシップサミット風景5

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