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コミュニティリーダーシップサミットから学ぶOSSコミュニティマネジメント(後編)

毎年、世界中のコミュニティのリーダーが集まるコミュニティリーダーシップサミット(Community Leadership Summit,CLS) 。グーグル、Twitter、レッドハットなどの著名な企業のコミュニティ担当や、大小さまざまなコミュニティから、たくさんのリーダーが参加しています。今回は、このCLSの日本開催にいたる経過と当日の模様をJapanese raspberry pi users groupでおなじみのおおたさんから、紹介します(2015/05/11)。



Japanese raspberry pi users group のおおた まさふみです。前編に続いて、コミュニティリーダーシップサミット(Community Leadership Summit ,CLS) から学んだことをきっかけにした、OSSコミュニティマネジメントやコミュニティのリーダーについて、ブログで書かせていただきます。

前編で紹介したように、この春に開催されたオープンソースカンファレンス東京 2015春で、とうとう、 CLSトライアルイベントである「CLSx Tokyo 2015 #0」の開催にこぎつけることができました。後編では、当日に参加者のみなさんとディスカッションした内容や考えたことを紹介したいと思います。

公式CLSイベントにするには申請が必要

CLSの各地での開催はいままで米国の一部、ヨーロッパで開催されていました。そこで、CLSをリードするJono Bacon氏(以下、Jono) は、毎年開催する本家CLSと区分して、CLSxという地域向けの開催についてルールについてライセンス形式のルールを設けました。公式サイトにフォーラムを設けてJonoがこのルールに基づいた活動をしているのは、以前から知っていました。今回、そのルールをじっくりと読んでみたところ、意外なほどに事細かにルールが設けられていましたが、公式開催のイベントにしたいということで、承認申請をすることにしました。

しかし、そこで心配があったことは、日本では、初めての開催ということあり、2時間で実施しようということを考えたことです。というのも、本家でも各地でもセッションは少なくとも半日で行われていたため、正式に承認をとれるかどうかがわからなかったのです。

そこで、コーディネートをしていただいたOSS Japanの今駒さんとも相談をして、今回はCLSの本格開催前のプレイベント的なものと位置づけることと、そして、CLS公式の次のCLSイベントとしての前座的なものとしての開催をさせてもらえないかとJonoに相談しました。すると、なんとあっさりCLSライセンスを発行できるとのリプライがあり、早速開催概要を書いて申請、初の開催にいたりました。

国内・海外の動向をいろいろ探索

初開催のCLSでのテーマをどうしようかということを考えることにしました。

恥ずかしい話ですが、わたしは、自分自身がリーダーや、それに準じたポジションであったコミュニティのマネジメントで失敗したことが数多くあります。

そこで、自分の経験を含めて現状分析してみることにしました。まずは、身近なところからと、自分が参加することも多いコミュニティの会合に参加し、リーダーや中心となり活動している人にインタビューしました。また、彼らがどのような活動をしているかをじっくりとウオッチしたりしました。さらに、海外のコミュニティ動向も集めて分析したのです。

そこから、日本のコミュニティ特有の問題として、次のようなことがあると考えました。

企業とコミュニティのあり方

企業とコミュニティとの関係、関わり方、スポンサーシップなどをどのように捉えるかというものです。

コミュニティの縮小化をどうするか?

コミュニティに新しいメンバーが入ってこないために、メンバーの平均年齢がどんどん上がっていたり、また、一部のメンバーが初心者に取って入りづらい、ギークによる先鋭化がおこったりして、コミュニティが縮小化することがあります。それをどのように防止するかというものです。

いわゆる女子部問題について

オープンソースコミュニティだけでなく、IT業界では女性の割合は高くありません。特に、エンジニアが中心を占めるオープンソースコミュニティやユーザー会では、女性がほとんどいないことも少なくありません。しかし、女性も参加している、あるいは参加したいと考えているかたも多くいますし、そのような話も直接聞いています。その敷居を下げるために、女子部を作るということもよくある活動の1つです。一方で、コミュニティをさらに人を増やす、具体的には男性を増やす目的で、女子部を集客ツールとして利用するところもあるのも事実です。後者については、男性からも女性からも、少しやりすぎではという批判があります。

リーダー不在問題

これは、コミュニティにリーダーがいないという表面的に見えることではなく、実際には、リーダーがいることにはなっているが、実際には、リーダーとしての活動がしていないために、本当はいないという状況であるコミュニティがあるという問題です。なぜ、そういうことがおこるのかを考えてみたいと思ったのです。


いよいよ当日! 思った以上集まった参加者と白熱した議論に!

正直、オープンソースカンファレンス東京 2015春の2日目の朝早くの開催となったこともあり、それほど多くの人も集まらないだろうなと考えていました。ところが思った以上に集まり、かつコミュニティへの意見を持つ人が多く、白熱な議論となりました。

開催時間が2時間という短いこともあり、さらにアンカンファレンス形式という中で、各参加者の意見・議論が出にくいだろうなと考えました。そこで、CLSの紹介と、上述の動向を議論ヒントとして提供することにしました。

参考資料:CLSx tokyo 2015 #0


しかし、この資料をすべて説明する前に、各参加者がそれぞれ自分の意見を発表し始めたのです。そこで、当日議論された内容を紹介することにしましょう。

(時間の関係から、トピックをすべて話しきるということはできませんでしたので、議論の経過の紹介になっていることをご容赦ください。また、これらは結論ではなく、意見の一部です。)

コミュニティをどうデザインするか

  • 資金をだすだけでは貢献者は集まらない。

日本での企業とコミュニティの関係

  • Community Managerという職位がない
  • フルタイムジョブでOSSへの貢献をすることができない企業が多い、もし対応していくなら独立起業するしかない。

グローバルコミュニティに対する日本のコミュニティの関係の希薄さ

  • 本家に貢献しようというコミュニティが少ない

  • 本家で、日本人コミッターを担当するフルタイムジョブ対応が必要

平均年齢が上がることとギーク先鋭化によるコミュニティの縮小・消滅や若手との分裂

  • 参加の敷居をさげていかないと、コミュニティは萎縮化してしまう。

日本のコミュニティにはリーダーがいない・やりたがらない理由

  • リーダーシップをとると、独裁といったさまざまな厳しい指摘をメンバーから受けてしまうことがあるため、面倒でやりたがない
  • どこまで民主主義でやっていくかの問題は常に考える必要がある。

女性と萌えを使ったゲーミフィケーションの問題について

  • 萌えや女性によるゲーミフィケーションはコミュニティの活性化に役に立つ場合があるがやりすぎるとかえって逆効果になる。

cls2.jpg


当日、わたし自身は、次のようなことを話しました。

  • 日本では企業はほとんどでオープンソースの利用者止まりであること
  • コミュニティへのフルタイム対応をできる環境をできる環境が整えていないこと
  • 日本のコミュニティではリーダーの積極的なリードが厳しい。例えばイベント・プロジェクトに対しメンバーの対応を求めても、何人かのメンバーは消極的ある。また、時には強烈な反対/拒絶/非協力などにあうことがある。そのため、リーダーやそのイベントプロジェクトリードの負担がかなり大きいこと

 

cls2-21.jpg

CLSを通じてコミュニティマネジメント議論の活性化

2012年に初めて海外でCLS参加したことがきっかけとなり、今回短いながら初のCLSの日本開催にこぎつけることができました。日本での開催に不安があったことも事実ですが、コミュニティにまつわる問題について多くの人が疑問をもっていることがわかり、共有できるものと認識できたことをうれしく思いました。次回は、半日を使った形での本格的なCLSの開催に向けて、準備中です。開催が決まったら、ぜひこのブログなども通じて紹介したいと思います。また、フェイスブックページを開設していますので、アクセスください。

また、CLSに加えて、今後もさらに海外と密接にOSSコミュニティとの関係を進めて、有用なコミュニティ文化をとりいれ、コミュニティ活動を積極的に展開できるようしていきたいと考えています。

例えば、わたしはOpenSolarisコミュニティでのコミッターの活動を通じて知り合った当時の仲間から、CLSだけでなく、今でも「日本でも、こんなイベントを開催しない?」という紹介を受けます。例えば、Software Freedom Day (SFD)もそんなきっかけで始まり、やろうぜと呼びかけ、今では日本でもいろんなコミュニティでSFDが開催されていると思います。このような機会をもっと国内で展開していきたいと考えています。

最後に、この後のコミュニティリーダーシップについて、私見を述べたいと思います。

日本のコミュニティは、技術志向が強く、技術力があれば、それでリードできるという傾向があります。
しかし、それができたのは、一部の企業がコミュニティに対して、執事のようにサポートする立場で協力してきたからではないかと思っています。そのため、さまざまな細かいことや面倒なことに対するコミュニティマネジメントを、企業にある意味丸投げすることで、リーダーも、メンバーも、自由な活動ができたところもあったのではないでしょうか?

一方で、企業の協力をまったく得ることができないコミュニティもあることは事実です。そのような場合は、リーダー・メンバーともに、お互いに手を取り合いつつ、運営していかなければなりません。このような運営になるコミュニティは、日本では少なくなることはなく、増加しつつあると感じています。そのため、コミュニティマネジメントということが、より一層の脚光をあびるようになると考えています。


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