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「ラズパイ」でおなじみのRaspberry Pi。その誕生と今後は?【前編】

ラズパイというニックネームでおなじみのRasberry Pi。今回のゲストブログは、Japanese raspberry pi users group のおおた まさふみさんから、Raspberry Piについて、前編・後編に分けてご紹介いただきます。前編である今回は、Raspberry Piとはなにか、また、Raspberry Pi財団設立についてを語っていただきます。(2015年06月02日)



Japanese raspberry pi users group のおおた まさふみです。先日前編後編で、コミュニティリーダーシップサミット(Community Leadership Summit ,CLS) から学んだことをきっかけにした、「OSSコミュニティマネジメントやコミュニティのリーダー」について、紹介させていただきました。
今回は『本業』であるRaspberry Piについて、Raspberry Pi財団(Raspberry Pi財団については、後ほど紹介)の公式フォーラムのモデレーターとしてお手伝いしている立場もあり、ブログで書かせていただきます。
 

そもそもRaspberry Piとはなにか?

Raspberry Piは、学校でのプログラミング教育向けの名刺カードサイズのPCとして、手頃な35ドルという設定価格で2012年に登場し、既に3年が経過、500万台以上も出荷したそうです。

ターゲットは初等から中等教育現場での利用が想定されていますが、実際は日本などではエンジニアのちょっとしたDIYや、ビジネスでの利用もされています。もちろんこういった利用方法もRaspberry Pi創始者であるEben Uptonは否定していません。

Raspberry Pi財団は、1つのチャリティプロジェクトとしての位置付けがされています。トップであるEbenは、本業としてBroadcom社のアーキテクトを兼任しています。また多くのメンバー、特にエンジニアリングチームがBroadcom社との兼任し、教育向けのソリューションのチームは小中高学校の先生と掛け持ちをしています。ケンブリッジ大学の学生などもインターンなどの形で財団に協力をしています。メンバーの中にはそこそこお年の召された職人?のようなエンジニアの方もいます。

なお、Raspberry Piという命名ですが、RaspberryはAppleなどフルーツの名前をなぞらえて、Piは、もうおなじみかと思いますが、プログラム言語でおなじみのPythonからつけています。

写真1 創始者Eben Upton

創始者Eben Upton (秋葉原にて)

Raspberry Pi開発のきっかけ

2006年 、Ebenはケンブリッジでの教鞭をとっていたころ、学生のプログラミング力の低下に気づきます。彼の記憶では、彼が学生であった1995年ごろはC言語などなんらかの形でプログラムを書くことができたが、そのころの学生は簡単なHTML言語で簡易なWebデザインができる程度のレベルまで低下していたということだそうです。

Ebenは低下した原因について考えますが、それがなにかは完全にはわからずじまいでした。ただ、1995年頃に学生であった世代にとってPCとはコモドール64やX68000などプログラミングで動かす8/16ビットマイコンであったのです。最近の学生の世代では、それがプレイステーションやニンテンドー、モバイルゲームに取って代わられ、きちんとプログラミングを学ぶきっかけが奪われてしまったということが、その要因のひとつであろうと理解したそうです。そこで、2007年に、Ebenはこのギャップを埋めるものとしてRaspberry Piの開発プロジェクトをはじめました。写真は、もっとも最初のプロトタイプです(Raspberry Pi財団のページにも掲載されています)。

写真2 Raspberry Pi Prototype

Raspberry Pi Prototype

Raspberry Piのゴール

Ebenは、Raspberry Piを開発するにあたり次のことをゴールとしました。

  • 可能な限りいろいろな言語でプログラムができるものであること。
  • PCをこれから始める子供たちにとって楽しいものであること。つまり、とっかかりのつきやすいゲームやビデオを楽しむように使えるものであること。
    • これは、ゲームなどをきっかけにその中身であるプログラムの構造などに興味をもってもらうようにするため。
  • 小さくで頑丈。子供達が学校のカバンなどに気軽に入れて、持ち歩けるものであること。
  • 低価格 25ドル程度に抑えること。
    • この価格帯であれば学校の教材本などと同価格帯となり教材となりうる。

 

Ebenは『低価格』と、特に『頑丈さ』にはこだわってます。

例えば、価格という面では、一時期、急激に円安が進んだため、Raspberry Pi A+の販売価格が上がり、日本のみ同時リリースを見送りました。というのも低価格で提供をする上でRS Components社と調整する必要があったからです。

また、頑丈さについては、子供の行動を考えた設計をしています。正直この手のPCボードの一部は取り扱い注意だったり、ちょっと扱い間違えるだけで壊れるなどあります。しかし、Raspberry Piは、よっぽどでない限り子供の取扱い間違いなどによって『壊されないようにする』ということを、きちんと考慮しているようです。

 

携帯用CPUへの着目、財団の設立へ

2008年Ebenはケンブリッジを離れ、ネットワークカードや携帯用のSoC (System-on-a-chip)で日本ではおなじみのBroadcom社に勤め始めました。このころ、Broadcom社が提供している携帯用SoCは、実はかなりの高性能でありながら、従来のPC用チップなどと比べてかなりの低価格でした。そのため、彼は、Raspberry Piを実現する上で理想的なチップであると考えて、Nokiaの携帯用に使われていたBroadcom社のBCM2835というSoCをRaspberry Piに採用しました。

さらに、翌年5月にRaspberry Pi財団が彼を中心とした6人のメンバーで設立されます。

写真3 始めた頃のRaspberry Pi財団のオフィス風景

始めた頃のRaspberry Pi財団のオフィス風景

2011年にプロトタイプ完成、BBCブランドでの販売の断念

2011年にRaspberry Piの製品版プロトタイプが完成しました。Ebenは、思い入れのあるマイコンであったBBC Microのことを思いだし、BBCブランドでの販売を試みようとします(注: BBC Microは、エイコーン・コンピュータが英国放送協会BBCの運営する BBC Computer Literacy Project のために設計・製造したマイクロコンピュータと周辺機器のシリーズ。教育用途を意図して設計され、頑丈で拡張性があり、オペレーティングシステムの高品質が特徴。Wikipediaから抜粋)。

しかし、著作権問題などさまざまな問題があって実現には至りませんでした(余談ですが、僕はNECのPC98やMSX世代で製品への思い入れがあります。海外の方でも、こういうオールドPCへの思い入れはかなり強いようです)。

Ebenは、たびたび、BBC Microという製品への愛着を僕に話してくれたことがあります。よっぽどこの名前にはこだわっていると感じました。ただ、BBCは、現在、Raspberry Piにも関係があります。僕が、BBCに訪問した際、ジャーナリストのRory Cellan-Jones氏にたまたま会うこと機会がありました。そのとき、彼が撮影した『Raspberry Pi - the £15 computer』という2011年の5月に流した動画を見せてもらいました。彼によれば、この動画をアップロードしてたった2日で60万ものアクセスを記録したそうで、Raspberry Piブームのきっかけを作ったといわれています。

 

2012年のローンチと大幅な供給不足

Raspberry Pi財団は、ローンチ前にRS Components社やElement14などとライセンス生産が決まり、リリースを開始しました。Ebenたちは、当初1万台を生産し、これが数ヶ月で売り切れればいい程度と考えていましたが、なんと、リリースした当日に、10万台ものオーダーが入り一気に大幅な供給不足に陥ったのです。主にイギリスやアメリカを中心とした学校からの大型発注が多かったそうです。

RS Components社などは、格安で製造コストを抑えるため、主に中国で生産をしていました。しかし、流通・輸出関係で問題が発生し、数ヶ月という大幅な納期遅延となったのです。彼らは、対策を考えなくてはいけなくなりました。そこで白羽の矢がたったのが同じイギリスのウェールズにあるソニーUKのEMS(Electronics Manufacturing Service,電子製造受託サービス)を活用することでした。

イギリス政府も協力もあり、2013年半ばにはソニーUKでの生産が進みました。Ebenは、ことあるごとにソニーの仕事を絶賛し、品質管理や生産体制を日本とイギリスの素晴らしい協調であると自負しています。

 

写真4 ソニーUK工場

ソニーUK工場


前編では、Raspberry Pi  が開発されて、出荷されるまでの話を中心にお伝えしました。後編では、Raspberry Pi の今後の方向性について、ご紹介します。お楽しみに。

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