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「ラズパイ」でおなじみのRaspberry Pi。その誕生と今後は?【後編】

今回のゲストブログは、Japanese raspberry pi users group でおなじみのおおた まさふみさんです。おおたさんの『本業』である、Raspberry Piについて、前編・後編に分けてご紹介します。後編となる今回は、Raspberry Piの今後の展望について語っていただきます。(2015年06月17日)



Japanese raspberry pi users group のおおた まさふみです。前編に引き続き、Raspberry Pi の今後の方向性について、ご紹介します。

正常進化とソリューションの充実と幾つかの模索

Raspberry Piを知る方にはよく知られているように、Raspberry PiはEthernetポートを所有するタイプBと所有しないタイプAに分かれます。

最初に登場したのはタイプBです。当初はメモリが256MBでしたが、すぐに512MBへ拡大されました。そして、しばらく後にタイプAが出荷されます。

タイプAは、PCとして利用するものではなく、ロボットなどの組み込み機器として、主に電子工作用途を考えて開発されたものです。

この後、バージョンアップタイプのタイプB+、タイプA+と開発されています。基本的には、電源周りを強化したり、USBを増やしたり、小型化して、さらに省電力化を図るといったように、「正常な進化」という形で進んでいます。

設計は、あくまでベースである従来モデルとの互換性をできる限り保つこと、価格もある意味『無理やり据え置く』という形です。つまり、「ユーザーの使用環境は基本的に変えない」というスタンスによるものと思います。

実際、Raspberry Pi創始者であるEben Upton(以下、Eben) 氏が、インタビューや講演などいろいろなところで、「今後Raspberry Piはどのようになっていくの?」という質問に対して、

「あくまで基本はいじらない。それよりアプリや周辺機器などを充実させる方向だ」

という回答をしています。

実際、MathematicaやJavaをデフォルトで搭載できたのも、彼が教育目的ということを重視し、アプリケーションの充実に力をかけたからだと考えています。また周辺機器も、最近では、ほぼ再コンパイルなしで使えるものが多くなりました。こちらも、あくまで使う周辺機器で何をするかに重点を置いていた上で、対応が充実してきていると感じています。こういったところが、Raspberry Piが未だこの小型格安ボードでは独走する強みであると思います。

さて、このような一貫した方向性があるなかで、個人的に位置付けに未だ「謎?」なのがCompute Moduleです。あくまで企業利用を目的として、価格も若干高めに設定されたCompute Moduleは、製品紹介で産業用組み込み機器として開発されたと書かれています。しかし、この製品の紹介内容にも書かれているのですが、あくまでRaspberry Pi財団はチャリティ組織であり、非営利団体であるという位置付けを守ると記載されています。

なぜ、Compute Moduleがこのような形で開発されたかについて、まだEbenに詳しく聞いてません。ですが、僕は、教育だけでなく企業ユーザーも多いRaspberry Piに対し、もっと企業が使いやすい機器を作りたかったのではないか?と考えています。

ただ、やはりSO-DIMM状というへんぴな形もあって、これをつかって何か取り組むという企業は思ったよりかなり少なく、実際に実現した製品も財団関係者がつくったメディアサーバや一部の企業が作ったカメラくらいで、聞こえてきません。ただ、少数ながら、いくつかの日本の企業から、Raspberry Piの使いやすさからか、Compute Moduleを使って開発をしたいという問い合わせもいただいております。今後、どのようになっていくかを注視していきたいと思います。

写真5 SLICE Media Server

SLICE Media Server (Compute Moduleを使ったMedia Server)

写真6 OTTO

OTTO (Compute Moduleを使ったCamera)

突然でてきたRaspberry Pi 2

実は、ぼくは、昨年、突然にイギリスに行こうと決意しました。

この背景には、財団の一部のメンバーが2014年6月のBroadcom社のベースバンド事業撤退の話をしていたことがあります。

Broadcom社のRaspberry Pi用のBCM2835はあくまで携帯向けのSoCを転用した製品あることから、財団内部ではかなりの懸念があったようです。ただ、すぐにRaspberry Pi用のBCM2835について、Broadcom社から当面の生産確約を得たことで、一時は収束したそうです。

その話を聞いて、一安心しました。しかし、この話の前にあったB+リリース時の事前リークの対応処理があまりに稚拙だったということもあり、正直、財団の経営姿勢に疑問があったのです。そこで、思い立って、一度見に行くしかないだろうと、2014年10月、イギリスのケンブリッジまでRaspberry Pi財団を訪問することにしたのです。

訪問時には、Ebenとは、Raspberry Pi A+の出荷についての話が多く、ロボットや電子工作などを話題にしていました。他のRaspberry Pi財団のメンバーとも話をしても、この『BCM2835事件』は落ち着いたなと感じて、帰国しました。

製品開発の方向性としては、このあと、BCM2835のような旧型のARM 11ベースのものを継続して利用することはなく、ARM A7ベースになるだろうと考えました。一つには、ARMチップの製品ライフサイクルが短く、今後ARM 11ベースで継続することは厳しいだろうと予測できたからです。

そして、2015年2月に突然、Raspberry Pi 2をリリースすることをRaspberry Pi財団から連絡が入ったのです。この連絡は、寝耳に水な状態でした。Raspberry Pi 2は、互換機と称している中国系の機器と同様、予想通りARM Cortex A7ベースでした。Raspberry Pi財団をサポートしているモデレーターの中には、中国製互換機と称するものと同じ土壌に立つのか? という疑問を持った人もいました。互換性、差別化、周辺機器との関係など、いろいろな質問が飛び交いました。そして、ある意味本当にいきなりの連絡だったため、多くの質問が内部で飛び交う事態となったのです。

最終的に発表された製品を見ると、従来との互換性を保ちつつ、性能を約6倍高めたというのは、まさに新しいRaspberry Piといえるのですし、財団の技術力を示すものだと思いました。

今後のRaspberry Piの展開はどうなるのか?

前回、Ebenは、今後は周辺のソリューションを充実させていく考えであることは紹介しました。この方向性は、今後も変わらないでしょう。

まずキセノン・デス・フラッシュ問題 が、今、問題になっているのは財団も認識しているので、この改訂版がでるだろうと予測をしています。

次にアプリケーションや周辺機器などを充実させ、より利便性が高まる方向に進むでしょう。Raspberry Piは、プログラミング教育を支援することを想定しているため、できる限り、プログラミング教育にあまり関係のない煩雑なプロセスをなくし、プログラミングなどの勉強に専念しやすいようにすると考えています。

また、Ebenや他の財団のメンバーは、多くのことを他から学び、そして取り入れていく傾向が強いのです。Ubuntuや他のコミュニティによるOSのサポートを取り入れたりしています。そして、教育でのプロモーションに関しても、ほぼ毎日のように、朝から夜までミーティングを行って改善を図っているという現状もそれを示しているのだと思います。

そして、今回のRaspberry Pi 2の開発責任者だった、James Adamsを紹介されたとき、Ebenは彼にMBAを取らせることでスキルアップを図ろうとしていました。イギリスで、特にケンブリッジ地域ではかなりの高学歴でないと生きていけないという現状もありますが、きちんとRaspberry Piのことはビジネスの観点からも見ていくという観点もEbenも持っているのではと思っています。

今後のRaspberry Piの国内展開について

あまりにいろいろなことができてしまって、汎用性も高いRaspberry Piです。そのため、本当に、ここ日本においても、学校や企業をはじめ、いろいろなユーザーがいろいろな用途で使っています。

今後はさらに多くの展開が予想されますが、あまりにも広い汎用的なものであるため、個人的には、具体的なところは予想もつきません。ただ、Raspberry Pi財団自体は、日々刻々と変わる小型PCの市場の中で活動しているため、突然「これだ!」という展開はあるかもしれません。

Raspberry Pi財団は、日本を大きなRaspberry Pi市場の1つとして考えています。

手ごろな価格の簡単に組み立てられるロボットキットであるRAPIRO を知っていることもあり、日本の技術力を高く評価しています。

Japanese raspberry pi users groupとしては、財団と相互に情報交換を行うことで、双方の要望をうまくつなげていければと思っております。Raspberry Pi財団側も、日本にはRaspberry Piを使った面白いプロジェクトやソリューションがあると信じており、その中には世界に十二分に応用できるものがあると思っています。

例えば、先日開催された英国大使館イベント関係のため、「日本で推薦するプロジェクトを教えて欲しい」とEbenから話がありました。そのとき、農業用ロボットのプロジェクト、ベアメタルでのユーズプロジェクト、Ejectコマンドユーザ会を推薦しました。Ebenは、これらは世界にも通じる内容を持っていると同意してくれました。他にも、日本企業で、Raspberry Piを活用した面白い事例も増えてきて、Webやオープンソースカンファレスで拝見する機会も増えてきました。

ぜひ、いろいろ事例や面白いプロジェクトがありましたら、Japanese raspberry pi users groupでご紹介いただけると幸いです。

Ejectコマンドユーザ会

Ejectコマンドユーザ会(大内明さん)

Japanese Raspberry Pi Users Groupの紹介

最後にJapanese raspberry pi users groupの紹介をさせてください。3年前の秋に開催されたオープンソースカンファレスで、みんなにやってみたらという声と勢いでできたユーザグループです。日本からは、僕のような半分中の人という立場の人もあり、Ejectコマンドユーザ会が世界でも有名になってしまったこともあり、なんともよく分からない展開ありますが、今後も、ゆるゆるしながらもオープンソースカンファレスなどを中心に活動していきたいと思っております。
また、Ebenからは、日本語版公式Facebookの運用委託もされており、定期的に情報提供を行っております。また2年前のようなEben夫妻来日があれば、今度は彼らが好きな日本酒をたらふく飲ませてあげたいものです。

Japanese raspberry pi users groupへの入会は簡単です。Google GroupでJapanese Raspberry Pi Users Groupで検索して、購読していただくだけで終わります。

前編後編と長くなりましたが、Raspberry PiおよびRaspberry Pi財団の活動はいかがでしたでしょうか?

今後もさまざまな?展開が予想されるRaspberry Piですが、ぜひ!ぜひ!ウォッチいただければと思います。

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